「保育観に対する考え方の違いに戸惑ったことはありませんか?」「どうすれば自分の保育観をうまく伝えられるのか悩んでいる…」
保育現場では、様々な保育観が交錯します。そして、その価値観が大きな課題となることもあります。そんな経験、保育士であれば一度は感じたことがあるはずです。
この記事では、保育現場での異なる保育観に対する理解と対処法を解説します。
この記事で分かること
- 保育観の基本とその影響
- 異なる保育観への対処法
- 保育観の違いをプラスの変える方法
様々な保育観にふれてきたベテラン保育士の僕が解説します。
最後まで読むことで、保育観に関する理解を深め、現場での対処力を向上させることができます。
保育観とは?
保育観とは、保育士が日々の保育活動を行う上での基本的な考え方や信念のことです。これらは保育士自身の経験や価値観、教育方針などに基づいて形成され、保育の現場での行動や判断に大きな影響を与えます。一人ひとりが持つ保育観は違って当然ですが、それが子どもたちやチームにどのように影響を及ぼすかを理解することが重要です。
保育観の定義
保育観とは、保育士が何を大切にし、どのように子どもたちと接するかを示す指針です。保育士の経験や価値観から形成されますが、それは単なる個人の好みではありません。保育の質に大きく影響を与える要素です。
具体例を挙げると、ある保育士は安全を最優先し、規律を重視する保育観を持つかもしれません。一方、別の保育士は子どもたちの自由な表現を重視することを大切にするとします。
それぞれの保育観には特徴がありますが、それが保育の質に直接的な影響を与えるのは間違いありません。どの保育観も間違っているとはいえず、それぞれがその場に合った保育の質を有しています。
最終的に、保育観の定義を理解し尊重し合うことで、より良い保育が実現できるのです。
保育観が保育に与える影響
保育観は、保育の質に大きな影響を与えます。保育士の考え方や価値観が保育への活動にダイレクトに影響するからです。異なる保育観が集まる園では、それぞれの視点が新たな気づきを得るきっかけになるでしょう。
例えば、ある保育士はコミュニケーションを大切にし、別の保育士は子どもの自立を促そうとします。両者の保育観が交わることで、子どもへのアプローチが変化し、一人ひとりに配慮が行き届くようになるのです。
多数の保育観の存在は、園全体の柔軟性を高めることがあるため、否定的に捉える必要はありません。結果として、多様な保育観が保育の場に活力を与えます。
個々の保育観の重要性
保育士をしていると、個々に異なる視点や経験があるため、様々な保育観が存在します。保育の軸といってもよいでしょう。軸にそって保育を行うことで保育の活動を深められるメリットが生まれます。
例えば、子どもの自主性を尊重する保育観を持っていると保育士がクラスを担当すると、子どもたちの社会を大切にするでしょう。その結果、子どもたちでルールを考え遊びの幅が広がったり、自分たちで解決策を考えたりすることも環境の設定として考慮する保育になります。
活動内容や保育のスキルなどは保育士の保育観に依存することが多く、それが周りの保育士に良い影響を与えると保育園全体で保育の質が向上するのです。
結論として、個々の保育観は保育の質を上げ、子どもたちの成長を促進します。保育士同士の積極的な意見交換が大切です。異なる保育観を認め合ながら、取り入れていくことで良い保育を実現できるでしょう。
保育観の具体例とその特色
保育観にはさまざまな具体例が存在し、それぞれに特色があります。保育士は自身の保育観を明確にするだけでなく、異なる保育観の特色を理解することが求められます。ここでは、保育観の理由を深堀りし、保育士の現場での役割やデメリットを解説します。
具体的な例を通じて、様々な保育観に触れていきましょう。
多くの保育観を見てきた中で、特に多いと感じる例を挙げていきます。
コミュニケーションを大切にする保育観
【背景】
子どもとの信頼を得たり、周りの大人を好きになれるため、保育園や外の世界が好きになれる
保育士に多い保育観の一つが、子どもとのコミュニケーションを大切にすることです。子どもたちは自分の話を聞いてほしいと常に感じています。それを丁寧に温かい雰囲気で尋ねたり、共感したり、驚いてみせたりすると、子どもたちは保育士に信頼を寄せます。
もっと論理的にいうと、人間を信頼します。人間を信頼できる環境づくりは、自分の気持を伝えたり、人の話を聞いたりと大人になるにつれて必要なコミュニケーションの基礎を作り上げられるのです。
しかし、常に子どもたちの話を聞くことは、他の活動を遅らせてしまうことも事実です。コミュニケーションを大切にしている保育士は、そのことに悩んでいることもあり、「今は先生のお話しを聞こうね」と子どもに伝えることに違和感を感じる場合もあるでしょう。
子どもとコミュニケーションを大切にする保育観をもつ保育士は、話すタイミングや雰囲気を意識しているため、学ぶことも多くありますよ。
子どもたちの個性を尊重する保育観
【背景】
好きな遊びをとことんすることで興味の幅が広がり、非認知能力や人との関わりなど学べる
子どもたちの個性を尊重する保育は、現代の主流になりつつあります。それ故に個性を大切にする保育観をもつ保育士も増えていることでしょう。例を挙げるとモンテッソーリ教育がそれにあたります。レッジョ・エミリアのアプローチもその一つと言えそうです。
子どもの主体的な活動を尊重し、それを見守ったり援助したりする保育は当たり前のようになっていますが、少し誤って考えている保育士もいるようです。
子どもを好き勝手にさせることが個性の尊重だとして、「自由にどうぞ」と放任してしまうと怪我をさせたり、トラブルが解決できなかったりと困ることになるでしょう。保育は放任ではありません。
しかし、正しい方法で行えば、集団と個性の共存は可能です。保育士がバランスを保ち、道筋と環境をつくることで、個人で遊びながらも、他の友達の活動に興味を示したり、ルールを示してあげることで「こうすればいいのか」と子どもたちも見通しを立てることができるのです。
自立を進めるための保育観
【背景】
小学校への進学に向けて、自分で見通しを立てて行動する力を育てたい
子どもたちの自立を進めるための保育観をもっている保育士も多いでしょう。理由は小学校への接続です。現代の小学校では、教師が常に子どものそばにいません。
また、サポートはあるといっても、ほとんどを自分の判断で行わないといけないため、保育園とは環境が異なります。その環境に戸惑わないためにも自立を進める保育が大切と考える人がいるのです。
自立を大切にしている保育士は、時には厳しく園児が嫌なことでもさせようとします。「これができるまで遊べません」はよく聞くセリフです。自立について深く説明すると長くなるため割愛しますが、自立はしつけと考え方が似ていると思いませんか?
僕自身しつけとは、子どもに環境を与えて(または、整えて)自分で考え行動する機会と捉えています。強制的に何かをさせることではないと思って、「信じて待つ」ことが最も大切だという認識です。
自立を進める保育は、現代の社会では仕方のない場合もあるでしょうし、大切なことです。しかし、社会に適合させることよりも大切なことを伝える場こそ、幼児教育として考えてみてはどうでしょうか。
文化を大切にする保育観
【背景】
親からの要望に応えたい・多種多様な文化に触れることで刺激を与えたい
異文化を大切にする保育観も増えてきています。今の保育園は日本人のみが通うものではなくなりつつあるからです。インターナショナルスクールなどもあり、英語を積極的に学びたいと考えていたり、家では英語で会話するけど、外では日本語も学んで欲しいなど家庭の事情あります。
そういった背景から、今月の給食はフィリピン料理、ブラジルの料理など提供する保育園もあるのです。また宗教上の理由から特定の食材をアレルギー扱いにする場合も考えられます。
今は多種多様な文化を取り入れ、子どもたちへの刺激を目的にしている場合が多いです。しかし、日本文化を伝えることも忘れてはいけません。昔の風習を大切にし神社へ遊びにいったり、コマ回しやカルタあそびなどを取り入れて昔遊びをしたり意識している保育士もいます。
行事の由来は簡単に伝える保育士は多いですが、保育士が文化を知っていてこそ伝えられるものがあるとして、勉強している人もいるのです。
社会性・ルールを重んじる保育観
【背景】
友達や周りの人に迷惑をかけ、変な目で見られないようにするためにルールを伝えたい
社会性やルールを重んじる保育観をもっている人も多いです。なぜなら、周りに迷惑をかけると子どもたち自身が困るからです。
順番を守らずに間に入ったり、友達のものを奪って好きなことをしたりする子どもは多くいます。それは自分の思い通りにならないと気がすまないからです。悪気はないのですが、自分中心で周りのことは気にしません。そういう子は保育士に言われて迷惑をかけたと気づきます。
繰り返し伝えることで、徐々に自分を律することを覚えてくるのですが、中には厳しくルールを伝え、罰を与えないと身につかないと考える保育士もいるようです。
僕も経験が浅いときは、知らないうちに社会性を育てるためと子どもたちを強く叱っていました。真面目で頑張り屋の人に多い保育観だと思います。
保育士の実体験から、処世術のように幼い子どもたちをルールで縛ることは、子どもたちの心や行動を抑制します。保育士の表情を伺う子どもたちがいるクラスは、集団行動はできても、自由に遊ぶ機会を減らしていると考えましょう。
保育観の違いを感じたときの対処法
保育の現場では、異なる保育観の違いに直面することがあります。このような状況では、保育観は人それぞれであり、何かしら同じ保育観も持っていると考えましょう。
上記の保育観を見ていただいたら分かると思いますが、保育観はどれも大切な保育の要素です。子どもの特性に合わせて組み合わせることで大きな力を発揮するため、この保育観が正解ではなく、すべての保育観が正解だと考えてみてください。
以下、保育観が違う保育士と一緒に活動するための方法を紹介します。僕の実体験なので参考にしてくださいね。
- 保育観はみんな違う
- 認め合う
- 対話する
- 子どもの育ちのゴールを認知し合う
詳しく解説します。
保育観の違いを認め合う
保育観は保育士が子どもと関わるうえで、どう育って欲しいかという思いです。それは保育士自身の成長体験からの影響も大きく受けています。そのため、人がみんな同じ考え方ではないように保育観はみんな違うのです。
しかし、他の保育士との保育観が違うことで「そうじゃない」「そこはもっと別の方法があるでしょ」と感じることも多いですよね。そういった場合、そのままにしておくと「あの保育士とはやりにくい」「また違うことをしている」と批判ばかりになってしまいます。
嫌な空気感が流れて、関係性がギスギスするので、早めにお互いの価値観を話すことが大切です。そのために対話をしましょう。
保育観が違う保育士と対話する機会をつくる
保育観が違う保育士と一緒に仕事をしているとお互いにストレスがたまるでしょう。その場合、どちらも疲れてしまい、子どもにとっての良い保育はできません。行うことは対話です。対話とはお互いの気持ちを語り合い、違いを認識する作業のことをいいます。
対話のポイントは下記のとおりです。
- 意見を批判せず、耳を傾けること
- どういう意図で保育をしているか話すこと
- 質問があれば、しっかりと聞くこと
- 自分にどうして欲しいか確認すること
対話する機会を設けたのに、喧嘩しては意味がありません。せっかくだから良い方向へ進みたいですよね。批判や人格攻撃は絶対にしないようにしましょう。
まずはしっかりと意見を聞くことと伝えることが大切です。質問や疑問点があれば、確認すると再確認しないで済みます。
また、あなたがどんな保育をしたいか、それによって子どもたちにどうなって欲しいかを伝えましょう。お互いに意見を重ねることで、認識のすり合わせを行うのです。
そして、最も重要なことですが、周りがあなたに求めていること確認してください。
【まさマルの体験談】
僕は苦手な先生がいました。すぐに「それってどうなの」「正直、こうして欲しいんだよね」など、自分の保育を否定されているような気がして、自信を失っていました。
一度、お互いに限界が来て、意見のぶつかり合いになったことがあります。そこで、お互いに思いをぶつけることで分かったことがあります。
- その人は思ったことを言ってしまう性格だったこと
- そのため、批判はしていなかった
- 保育内容よりも、どう動いたらいいか指示が欲しい
- その人が保育で大切にしていることが分かった
わずか20分ほどの間でしたが、しっかりと話せたことで「自分がどうすればいいか」「相手の性格と嫌がること」「お互いの保育観」について理解し合いました。
その先生とは、すっかり打ち解けてLINEで連絡を取り合うくらい仲良しになりました。
話さないと分からないことが多いですが、本気で会話する機会がないのも、保育士の現状ですね。
違う保育観からゴールを認識し合う
僕の実体験からで恐縮ですが、対話から分かったことで、お互いが大切にしている保育は「子どもファースト」つまり、仕事や作業よりも子どもと関わることが共通認識でした。
全体連絡を後回しにはせず、保育園の流れを把握し、子どもとの関わりを重視する保育を目指しましょうとクラス担当の保育士で話し合いの場をつくりました。するとクラスの保育士たちで共通認識が生まれ、子どもと関わるためにはどうするか、愛情をもって接することは全然OKと意思疎通ができ、動きがスムーズにになったのです。
保育観はクラス運営をするうえで、とても大切です。明確なゴールであるクラスの目標や流れを示せたことでクラス担任からは、「このメンバーでよかった」「とてもやりやすかった」と声をかけてもらいました。
クラスの共通認識をしっかりと話し合うことが、様々な保育観を共存させるコツなのです。
異なる保育観から学ぶこと
異なる保育観からは、多くの学びを得ることができます。他の保育観に触れることで、自分にはなかった視点が広がります。そして、新たなアプローチを取り入れる機会にもなります。
例えば、ある保育士が遊びを通じた学びを重視する保育観を持っているとします。しかし、別の保育士はスケジュールに基づいた学習活動を好むとします。この違いから、「遊びの中での学び」と「計画的な学習」の両方の利点を取り入れる方法を模索できるでしょう。
一見異なる保育観も、対話と理解を深めることで互いの良さを引き出すことが可能です。ですから、このような違いを恐れずに、積極的に関わっていく姿勢が大切です。
結果的に、異なる保育観を尊重し、取り入れることで、より豊かな保育環境を創り出すことができます。多様性は宝であり、互いに学び合うことで成長していけるのです。
よくある質問と回答
保育観についての理解を深める中で、よくある質問がいくつか挙げられます。これらの質問は、保育観の違いに直面する際や日々の保育活動において疑問や不安と向き合う際に生じるものです。
それぞれの質問への回答を通じて、保育士としての視点を広げ、より良い保育環境を築くための手助けとなる情報を提供します。以下、ご質問に対する具体的なアプローチを示します。
気持ちの整理方法を知りたい
保育観が異なるとストレスを生みます。この状況を乗り切るためには、気持ちの整理が重要です。気持ちの整理する方法は自己理解を深めることから始めましょう。
保育観から他の保育士を批判する姿が顔を出すかもしれません。しかし、自分と対話し自己分析することで、あなたの保育観を見つめ直し、他の人の保育観との共通点を探し出せます。
例えば、日記などは良い方法です。毎日の出来事や感じたことを書き留めることで、自分の気持ちを吐き出すことができ、違った視点で考えられる機会が増えるでしょう。
また、リラックスする時間を持つことも大切です。保育中にでも簡単なストレッチや深呼吸、空や自然を見つめるなど自分に合った方法を探してみるといいでしょう。そうすることで、心が落ち着き、柔軟な考え方ができるようになります。
気持ちの整理が難しいと感じることもあるかもしれません。しかし、これを否定する必要はありません。自分を責めないでくださいね。
最終的に、気持ちを整えることで、日々の保育がより充実したものになります。整った気持ちが、子どもたちとの関わりをより豊かなものにするでしょう。
年齢による保育観を合わせるには?
保育観は保育士の年齢によってズレがあります。保育観は今まで生きてきた経験や、子どもの頃に親から受けた教育の違いで変わるからです。
どの保育観も否定されるものではありません。その時代の教育方法やトレンドがあります。自分にはない視点を得られるチャンスとして、年齢が違っても保育で大切にしていることを聞いてみましょう。それにより、新しい保育方法や先輩保育士が工夫している保育の意図が感じられる場合もあります。
自分とは違った保育観を積極的に話を聞きに行くことで、保育士としても成長に繋がるでしょう。
保育観が合わない場合にすべきことは?
保育観が合わない場合、まず冷静に問題に向き合うことが大切です。自分の保育観を再確認し、なぜ合わないと感じるのかを整理しましょう。
例えば、ある職場で求められる保育観が、自分の信念と異なる場合があります。このような時には、話し合いが有効です。異なる視点を受け入れることで、新たな学びや成長の機会となります。
また、意識的にオープンマインドを心がけることで、他者の意見を理解しやすくなります。衝突を避けながら、自分の考えを伝えることも忘れずに。最終的に、皆が共に子どもの最善を考えることが目標です。
しかし、どうしても保育観が合わない人や保育園の方針がある場合は、転職も考えてもよいかもしれません。価値観を他人と合わせることは、非常に大変ですし、時間を無駄にしてしまうかもしれません。
どんな保育を大切にするかを自分の中で明確にして、選択してみましょう。
まとめ
本記事では、保育士が知っておくべき保育観とその対処法について解説しました。
主なポイントは以下の3つです。
- 保育観は保育の質に影響がある
- 保育士の保育観を主張しすぎると、周りと亀裂が入る
- 対話すれば、違う保育観とも共存できる
保育の現場で戸惑うことがあれば、複数の保育観を視野に入れて、前向きに取り組んでください。自分の価値観を持ちながらも柔軟に取り入れる姿勢が大切です。
保育園との保育観が合わない場合は、転職をおすすめします。理由は改善されないからです。個人と個人では、話し合えますが、組織と個人ではできることが限られるでしょう。そのため、ストレスとためる場合が多いです。
改善が見込まれないと感じる場合は、様々な保育園の特徴を知っている転職エージェントに任せてるのも方法の一つです。
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