「保育士の退職を考えたことがある」「離職率が高い業種だと聞いたことがある」
そんな声をよく耳にします。一度は気にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
この記事では、保育士の退職に関するデータや理由をご紹介します。
この記事で分かること
実際に15年間の保育で転職に悩んできた僕が解説します。
最後まで読むことで、保育士退職における状況と対策を知れて、行動に移せるでしょう。
保育士の離職率は9.3%と高くはない
保育士の離職率は9.3%です。保育士の離職率は高いと言われてきましたが、実際は福祉業界の15.3%や教育業界15.2%に比べると高くないと分かります。
これは個人的な意見になりますが、辞めたい人は大勢いるけど辞められないことや、保育士が足りていない現状から離職率が高いと言われるのでしょう。
2年未満の離職率が最も高い
保育士の2年未満での離職率が最も高く、15.5%です。これは、仕事を始めたばかりの保育士が理想とのギャップを感じることが原因でしょう。
例えば、「仕事内容が多く子どもとじっくり関われない」「職場での人間関係がギスギスしている」などです。入職したころは優しく教えてくれた先輩も、行事前は苛立ちから冷たく当たられ、「こんなはずじゃなかった」と精神的に追い詰められることもあります。
しかし、短期間で退職することが良い選択であるとは限りません。他の選択肢や自分の成長の機会を考えることが重要です。最終的に、忍耐強く続けることで、保育士としての実力が広がる可能性があります。
8年未満の職員が約半数を占める
保育士の職場では、勤続年数8年未満の離職率が49.4%と約半数を占めています。なぜなら、保育士はある程度の経験を積んだ段階で、自分の保育観や保育環境を考え、他に良い場所で働けないかと考えるからです。
一人ひとりの子どもとの関わりを大切にしたいから、少人数の企業型小規模保育園で働きたい
給料が上がらないから、ボーナスが多めのところに就職したいなど考えるでしょう。
しかし、実際、環境に満足し長く務め続ける方もいるため、自分にあった保育環境を一度考えることが大切です。今後の進む方向性を改めて見つめ直すと良い結果になります。
保育士が退職を考える主な理由
保育士という職業は、やりがいがある一方で、退職を考える理由がいくつか存在します。仕事をしていると多くの保育士が直面することなので、しっかりと理解しておくことが大切です。
厚生労働省の資料によると、保育士が退職する主な理由は以下の3つです。
どれも、保育士をしていると直面する問題ばかりですね。詳しく解説していきます。
①給料が低い
保育士の職業において、給料が低いことは退職を考える大きな要因です。保育士の年収は388万5,000円です。日本人の平均年収は485万円なので、給料は低いといえます。
保育士は経験を積んでも大幅な昇給は期待できないことが一般的です。家賃や食費などの生活費を考えると、長期的に働き続けることが難しいと感じる理由の一つになります。
結論として、給料の低さから保育士が退職を考えるのは自然な流れです。業務量や大きな責任に給料が見合っていないといえるでしょう。
僕の初任給は手取りで11万円でした。これじゃ暮らせないのというのが、本音でした。
参照:政府統計の総合窓口e-Stat「賃金構造基本統計調査 / 令和5年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種」
参照:国税庁「令和4年分 民間給与実態統計調査」
②仕事量が多くて長時間労働
保育士が退職を考える理由の一つに、仕事量の多さと長時間労働があります。世間的には子どもをみているだけでしょうと考えている人もいますが、子どもをみるだけでも大変です。
子ども30人を毎日8時間みれますか?って言いたい。
子どもをみるだけでなく、お便り作成や連絡帳、制作物に行事の準備など。仕事を持ち帰らないと終わらない業務が盛り沢山です。
子どもの成長をみれる「やりがい」はありますし、感動する場面も多いでしょう。しかし、昼食を急いで食べて、業務して休憩時間は30分だけは普通の日常です。(1時間休憩とは一体?)
結論として、仕事量や長時間労働が原因で退職を考える保育士は、無理をせず自身の状況を見直すことが重要です。バランスを保ちながら働ける環境を求めることが、後悔しない選択につながるでしょう。
③職場内の人間関係トラブル
職場内での人間関係トラブルは、保育士が退職を考える大きな要因の一つです。職場の雰囲気が悪ければ、コミュニケーションが取りづらく、一人で多くの仕事をしたり、他の保育士から責任を押し付けられたりと心身ともにストレスとなるでしょう。
人間関係がうまくいかないことで、先輩や同僚の嫌なところに目がいってしまい、「なぜ自分だけつらい思いをしないといけないの?」と職場に行くのが憂鬱になります。
子どもや保護者とのトラブルでも、自分の保育に自信を失くし、自分自身が悪いと自己嫌悪に陥ることもしばしばです。それにより、退職を決意するケースが少なくありません。
結果、人間関係の悩みが仕事の質や自身の健康に影響を及ぼす前に、自分にとって最適な保育環境を見つけることが大切です。自分の気持ちを大切にした選択をしましょう。
【実態調査】退職の適切な伝え方
退職を考える際、どのように伝えるかは非常に重要です。適切な方法を選ぶことで、スムーズに退職の意思を切り出せるでしょう。
辞めていった先生たちが多くいた中で、僕の実体験をもとに解説します。
退職の伝え方は以下のとおりです。
年度末のタイミングだったり、園長の様子をみて退職を申し込んだりなど、焦らずにタイミングをとることが退職を切り出す秘訣です。
年度末を意識した退職タイミング
退職を切り出すタイミングってとても難しいですよね。円満退職したのであれば、年度末を意識して行動しましょう。
切り出すタイミングは4ヶ月前ほどがベストだと考えます。理由は、退職したあとの後任を探す時間だったり、引き継ぎをする時間だったりが必要だからです。
2ヶ月前では駄目なの?と思う方もいるでしょうが、2ヶ月前の1月に伝えても、新しい保育士はすでに就職が決まっている時期のため、なかなか人が集まらずに保育園に迷惑をかけてしまいます。
「少しお話する時期は早いと思いましたが、新しい先生を探す時間も必要だと感じましたので」と伝えると保育園側も納得しやすいでしょう。
総じて、退職のタイミングは自分自身と職場の両方にとって最良の選択を心がけましょう。円満退職を実現するために、準備と戦略が必要です。
退職を伝えたいときは、相手に時間を取ってもらう
退職を伝えるときは、必ず園長の機嫌や忙しくないかなどを確認しながら進めてください。週明けよりも週末が時間を取りやすいでしょう。
保育園によって、園長が不在が多いときは主任の先生に相談する形で外堀を埋めておくといいかも知れません。
忙しいときに退職の話を切り出されると、保育園側も大変になるし、噂や嫌味などを言われる可能性もあるため、きちんと「来年度のことでお話があるのですが、お時間のあるときにお話できませんか?」と段取りを踏みましょう。
退職理由は自分の都合で伝える
退職を伝える際は、自己都合で退職の意思を伝えましょう。以下、例になります。
退職理由の例文
- 「保育士を続けていたけど、心が限界のため一度、離れたいと思っています」
- 「通勤時間に時間がかかり、自分の子どもとの時間が持てないので、地元の保育園を探しています」
自己都合での退職は、保育園では改善できないことが多いため、はっきりと退職の意思を伝えましょう。
しかし、労働条件を理由にすると、改善しますと言われて引き止める口実ができてしますため、おすすめしません。
余談ですが、労働基準監督署に確認して残業代の未払いを「違法ですよね」と問い詰めていて辞めていった保育士もいました。園長もいきなり辞められ、計算に追われて大変な様子だったと記憶してます。
選択を後悔しないための対策
仕事の選択で後悔しないための対策を考えることはとても重要です。保育士としてどのような選択肢があるのか、自分の保育観を見直してみましょう。
退職にはメリットもデメリットもあります。それらを理解した上で、冷静に判断し、次のステップを考えてみてはいかがでしょうか?
自分の保育観を見直す
自分の保育観を見直すことは、退職を考える際に非常に重要です。働くことへの保育観を見直すことで、自分のしたい保育が明確になり、勤務先の保育園で実現できるか否かを判断しやすくなります。
保育において「子どもの主体性を大切にしたい」と思っている人が集団行動を重視して時間通りに活動を進めておくと違和感を覚えるでしょう。保育園の中では、当たり前のため伝えても改善されない可能性が高いです。
しっかりと自分の保育観を見直すことで、退職するかの判断基準になり得ます。
退職のデメリットを冷静に考える
保育士の退職にはデメリットがあります。主に経済的なリスクと新しい環境になれるリスクの2点です。
退職してすぐに、新しい働き口はあれば良いですが、その保育園になれるためにストレスがかかります。もちろん、良い刺激になり自分の成長にも繋がることもあるため、ストレスが悪いとは言いません。
しかし、多少の覚悟がないとやっていけないため、自分の勤務先で働くメリットとデメリットを冷静に判断しましょう。
チェックポイント
勢いで退職するのではなく、冷静に判断し計画を立ててから実行しましょう。
退職のメリットから自分の背中を押す
退職するメリットを考えてみましょう。退職を決めると新しく晴れやかな気持ちになれます。
貯金が十分なら、一度、充電期間にあててもいいでしょう。どんな保育園が自分に合うか、見学も申し込めます。フリーランスとして自由な働き方もあり、無限の選択肢が待っているのです。
自分の可能性が広がっていることを感じつつ前に進めることは、退職の大きなメリットです。
施設における子どもの人数や給料面、福利厚生なども一度、退職をしたいと考えたことがあるからこそ、十分に将来を考えて選択できるでしょう。
よくある質問と回答
保育士としての働くうえで、退職を考える瞬間は多くの人にとって避けられないのかもしれません。
退職を決断する前に抱く疑問や不安をここで解消し、素敵な将来を描いていきましょう。
保育士1年目での退職理由は?
保育士の1年目で退職する理由は、理想と現実のギャップです。「給料が思ったよりも少ない」「残業が多くい」「苦手な先輩がいる」などが挙げられます。
1年目を情熱で乗り越えることで、保育士としての実力が上がり、子どもたちへの視点も変わってくるため出来るだけ続けてみて欲しいところです。
しかし、どうしても子どもへの対応が理解できない先輩がいたり、自分のことを適当に扱われる保育園では、退職も視野に入れて良いでしょう。
なぜなら、人権に関わる問題だからです。子どもや保育士を適当に扱う場合、居続けることで保育に慣れてしまい、自分も先輩と同じことをやってしまっていたとは、あり得る現実です。
途中退職の前に考えるべきこと
中途退職を考える場合は、できるだけ次の勤務先を見つけておきましょう。中途退職を考えることは心身にストレスが積り、心が悲鳴をあげている場合が多いです。
もう無理、仕事にいきたくないと泣きながら、吐きながら保育園に行くよりは辞める準備をする方が健全で心にゆとりが生まれます。
保育園へ行けず、どうしても無理と感じたときは退職代行サービスを利用すると良いでしょう。
退職理由で面接官に好印象を与えるには?
転職のため、面接で退職理由を聞かれたときは、ポジティブな言葉で返しましょう。
単に「給料が安かったから」と答えるよりもポジティブに変換します。以下のように答えると面接側も受け入れやすいでしょう。
「保育が分かってくる中で、〇〇園の取り組みが子どもたちに寄り添った保育をしていると知りました。私もそんな保育を理想としていたので、務めていた園には感謝していますが、こちらで働きたいと思いました。」
このように伝えると、保育園の魅力に惹かれたと退職理由と志望動機を一緒にできます。
まとめ
本記事では、保育士の退職についてさまざまな角度から考察しました。主なポイントは以下の3つです。
まとめ
・保育士の離職率と退職理由
・退職をスムーズに進めるための適切な伝え方
・退職選択におけるメリットとデメリット
保育士としてのキャリアを後悔しないためには、自分の保育観を再確認しつつ、慎重に判断することが大切です。周囲の意見に左右されず、自分のペースで考えてみてください。
円満退職が理想ですが、本当に無理だと感じている場合は退職代行サービスについても知っておくと良いでしょう。