保育士が退職代行を利用することに対して「ありえない」思う人もいるでしょう。しかし、現実には辞める側にも事情があります。
この記事では、よくある反対意見や、退職代行サービスを選ぶ方が適切な場合について解説します。
この記事で分かること
注意点もしっかり押さえながら、安心して退職代行を利用しましょう。
最後まで読むと、自分の状況から退職代行サービスを利用するかどうかを判断できます。
保育士が利用する退職代行が「ありえない」といわれる理由
保育士が退職代行サービスを利用すると、保育園の園長や同僚から「ありえない」と思われるでしょう。突然、退職されると保育士不足で仕事の負担が多くなります。
退職の挨拶がないことに不信感を抱く場合も多いです。非常識と感じられることから退職代行の利用に抵抗を感じる人も少なくありません。
「ありえない」いわれる理由は以下のとおりです。
「ありえない」といわれる理由
・突然辞めると周囲に迷惑がかかる
・退職の挨拶がないことが非常識とされる
・引き継ぎが出来ずに困る
突然辞めると周囲に迷惑がかかる
保育士が退職代行サービスを利用すると、「突然辞めると周囲に迷惑がかかる」といわれます。保育士は計画案やお便り作成など様々な業務を分担しているため、急に退職すると同僚に仕事が振られ迷惑に感じられるでしょう。
保育士の配置問題もあります。保育士は人手不足といわれ、保育園の求人倍率は一般企業の1.35倍に比べ2.49倍と高いです。求職者よりも求人数の方が多いことから保育園は保育士を求めていることが分かります。
しかし、退職しないと自分がつらい思いをして心身が限界を迎える場合もあるでしょう。
僕も、当時は保育に希望を持てなくて、保育園へ行こうとすると涙がでたり、気分が悪くなったりしてました。
「行きたくない」と思いすぎて、勤務先の保育園を車で素通りしたことも……。
そんな状態で保育しても良い保育はできませんよね。退職を考える段階です。
よくよく考えると、退職をモチベーションに自分の仕事を終われせればいいだけです。退職代行サービスは退職日を自分で決められるため、水面下で退職を進められます。
退職の挨拶がないことが非常識とされる
退職の挨拶に来ないことで非常識と認識されています。お世話になった園長や同僚にお礼の挨拶は基本的なマナーだと思われているからでしょう。
ただ、退職代行サービスを利用する人には、どうしても保育園へ行けない理由があります。自分を攻める必要はないです。仲の良い同僚に対しては、LINEやメールなどで自分の状況を説明すると誤解はなくなるでしょう。
引き継ぎが出来ずに困る
急に退職されると引き継ぎができなくて困ると意見があるでしょう。任されている仕事を他の保育士に投げてしまうのは、自分としても心が痛みますよね。
しかし、引き継ぎは退職代行サービスを利用しても可能です。対面での引き継ぎがベストではありますが、書面やデータでの引き継ぎも可能でしょう。
引き継ぎをしないと損害賠償を支払うリスクがあるため、引き継ぎ書類は特定記録郵便または簡易書留で送り、相手に届いたか記録に残るようにしてください。
退職代行を使うのはクズではない理由
退職代行を利用することへ否定的な意見が多くあるでしょう。しかし、その人達は自分たちが退職代行を使わないといけない環境にしていることに気づいていません。
そもそも退職代行は無断欠勤や職場放棄とは違い、法的に退職をするための自己防衛手段です。ここでは退職代行サービスを否定すべきではない理由を紹介します。
無断で仕事を辞めていない
退職代行サービスを利用しても無断欠勤には相当しません。退職代行サービスから退職の意思を伝えているため、無責任で理由もない欠席とはなり得ないのです。
しかし、保育園側から退職届を出すように求められて、先送りにしている場合は注意が必要です。退職届を出さないと退職の手続きができないとして、欠勤扱いになります。
就業規則によりますが、2週間以上経過していると懲戒解雇処分をされるケースがあるのです。(開隆堂出版事件)懲戒解雇は離職票に「重責解雇」と明記されるため、転職で不利になる可能性があります。保育園から必要書類の提出を求められたら退職代行サービスを介して迅速に対応しましょう。
参照:企業向け法律情報誌リーガレット・ビズ「無断欠勤による解雇は14日が相場!企業としての正しい対応手順4つ」
人手不足は保育園の責任
保育園の人手不足は、保育士の問題ではありません。責任は保育者を確保していない保育園側にあるでしょう。保育園側は保育士の雇用を長続きさせるために労働環境を整備しないといけません。
厚生労働省が定める労働条件・職場環境に関するルールは以下のとおりです。
労働条件・職場環境に関するルール
- 賃金
- 労働時間・休憩・休日
- 労働安全衛生
- 性別による差別の禁止
- 仕事と家庭の両立
- 障害者への差別の禁止と合理的配慮の提供
労働安全性に記載されているように、保育園は保育士の安全と健康を確保し、快適な職場環境を維持するように求めれています。保育士の人数不足はあなたのせいではないのです。
体調を崩すことに責任をとってくれない
退職代行サービスを利用する人の多くは体調不良です。女性に特化した退職代行サービス「わたしNEXT」の調査では、女性の退職理由の1位は「精神的な体調不良」が25.75%、2位が「精神的にきつい」21.55%と精神的ストレスで47.3%が退職しています。
保育士も例外ではありません。保育園でのストレスは人間関係や労働環境など精神的なストレスをためやすいです。しかし、保育園で改善する取り組みはあっても体調を崩したことで給料を支払ったり、労働待遇の改善がされたりするケースは少ないでしょう。
また、上記の労働安全衛生に関して、うつ病やパワーハラスメントについても業務改善や心のケアをするようにと記載されていますが、多くの保育園では職場環境が整っていない現状がデータにより分かります。
それほど、保育士と精神的ストレス・体調不良は切り離せない問題といえるのです。
退職代行を利用した方が良いケース
退職代行サービスを利用したほうが良いケースを紹介します。
上記の理由では、退職代行サービスを利用したほうが後々、良いと感じるケースが多いです。自分の状況にあてはまっているか確認しながら、サービスを検討してみましょう。
精神的な理由で仕事に行けない場合
仕事の行けないほど、精神的に追い詰められいる場合は、退職代行サービスを検討したほうが良いでしょう。なぜなら、自分で退職の意思を伝えるのに、他の人よりも何倍も負荷がかかるからです。
出勤時間になると激しい動悸や吐き気がして出勤にも一苦労ですし、悲観的な心情になっていることが多く、自分からコミニュケーションが取れません。周りから心配されても、「大丈夫です」といってしまう状態なので、自分の気持ちを吐き出せず、負のループに陥ることもあるでしょう。
表情が暗い状態で出勤しても、良い保育はできず、上手くいかない感じて自己嫌悪になることも。
結果的に、注意力散漫で子どもに怪我をさせたり、失敗して事故になったりと保育園に迷惑をかけてしまい、心も体も限界になり、体を壊してします可能性もあります。
僕もうつのような症状を引き起こして、行事中の駐車場誘導ミスで保護者の車を破損させてしまいました。「どん底」という言葉がぴったりの心境でした。
保育園へ行けない状態であれば、退職代行サービスを利用して楽になりましょう。
強引な引き留めにあっている時
自分で退職を伝えたが、「次が入るまで待って欲しい」、「あたなに抜けられると困る」と何度も引き止められる状況では、退職代行サービスを利用しても良いでしょう。
なぜなら保育園側は、あなた一人のために労働環境を変えないからです。労働条件を理由に退職を願いでると、改善を約束してくれる保育園は多いでしょう。
しかし、15年も業界にいると改善したように努力をしても実際に改善されるケースは稀であると感じます。退職の意思を伝えるには、自分の都合で辞めましょう。その際、はっきりと必ず退職する覚悟を示してください。
それでも、退職を先延ばしにしようと保育園側が精神的に説得してくるなら、思い切って退職代行サービスを利用してください。法的な措置をとれば、保育園側も何もいえなくなるでしょう。
有給や退職金の交渉が難しい場合
保育園の雰囲気から、有給が消化できずにいたり、個人で退職金が欲しいと言い出せなかったりする場合は退職代行サービスを利用しましょう。
有給消化は労働者の権利ですし、退職金はあれば欲しいですよね。退職代行サービスを利用すれば有給申請や退職金の請求も可能です。
しかし、退職代行サービスの中でも一般企業がおこなっている業者は交渉ができません。有給や退職金、未払金の請求ができるのは、弁護士や労働組合がおこなっている退職代行サービスです。その他は違法になります。
退職代行サービスを選ぶときは、弁護士か労働組合が運営しているサービスを選びましょう。稀に弁護士監修などのサービスがありますが弁護士が法的に間違っていないかを、確認しているだけです。弁護士がおこなっているサービスではないので注意してください。
退職代行の利用を避けるべき状況
退職代行サービスは万能ではありません。退職を言い出せない状況にある場合に有効なサービスです。ここでは、退職代行サービスで後悔する可能性がある状況を紹介します。
退職代行の費用が払えない
退職代行サービの費用が払えない場合は利用を考え直したほうが良いでしょう。このサイトでおすすめしている退職代行サービスは労働組合や弁護士が運営するサービスです。費用相場は2万5,000円〜5万円+オプション料金と決して安くはありません。
また、後述しますが退職代行サービスを利用する場合は、次の転職先が決まっていないことが多いでしょう。そのため生活が苦しくなる危険性があるため、おすすめはできません。
自分で退職の意思を伝えられることがベストですから、「お金をかけたくない人」「生活が苦しくなる人」はつらい状況でも自分で退職を伝えましょう。
職場近くで噂が広まることがある
保育園を退職代行サービスで辞めると噂がたちます。世間では一般的な辞め方でないことや、同僚からの愚痴などによって広まるでしょう。
最も怖いのは、同僚の友達や保護者が、転職先の保育園で勤めていることです。「友達から聞いたけど、新しく入ってきた先生は退職代行を使って辞めたらしいよ」と新しい勤務先で噂になります。
以前、退職した先生が新しい保育園ですぐに休むらしいと、聞いてもないのに情報が入ってくることもあるのが保育業界です。
同じ地域で転職する予定の人は、退職代行サービスは避けてください。後が怖いです。
転職先が決まっていない
転職先が決まっていないときは、サービスを利用するか慎重に判断しましょう。生活費に不安を抱えたまま仕事を探すと精神的なストレスを増やします。
しかし、退職代行サービスを利用する人は、精神的なストレスで限界を迎えた人のため、先の転職まで考えられないことも多いです。その場合は、退職を優先することで、時間をつくりましょう。
前述しましたが、保育士は求職者に対して求人数が多い業界です。保育観を見直し、自分にあった転職エージェントを利用することでより良い保育園で仕事を探せます。
よくある質問と回答
退職代行サービスに関して、保育士の方々からよく寄せられる質問にお答えします。退職を考え始めた時には、不安や疑問が湧いてくるものです。ここで不安や疑問を解消し、自分が退職代行サービスを利用すべきかを判断してください。
退職代行はどんな人が使うの?
退職代行サービスを利用する人の特徴は、精神的なストレスによって保育園に行けない状態になる人が多いです。心の健康が優先されるべき状況では、自分での対処が難しいこともあります。
また、高圧的な雰囲気の保育園では、退職したくても言い出せない環境もあるでしょう。その場合は退職代行サービスを利用する選択を考えてください。
結論として、精神的なストレスで保育園に行けない場合や自分では退職を言い出せない雰囲気の場合に退職代行サービスが助けとなるでしょう。
退職代行を使うと何日で辞められる?
退職代行サービスを利用すると、通常は手続きから数日で退職が完了します。これは、退職の意向を上司や職場に直接伝える手間を退職代行サービスが請け負ってくれるためです。
多くのケースでは、退職代行サービスが利用者の意向を速やかに伝え、その日のうちに手続きが進むことがあります。大きな手間もなく手早く進むため、心の負担を軽減することもできます。
結局のところ、短期間で退職を実現できるため、迅速な解決を希望する場合には最適な手段でしょう。
入社初日に退職することは可能?
入社初日に退職することは可能です。退職の意思が固い場合、その意志を速やかに伝えることが重要です。法律上、退職の権利は全ての労働者にあります。
引用元:厚生労働省「労働政策審議会労働条件分科会 第49回資料」民法(明治29年法律第89号)(抄)
第627条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申し入れをすることができる。この場合において、雇用は解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。
6箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、3箇月前にしなければならない。
つまり、退職届を提出し2週間後には辞められます。また、雇用期間が1年間などの場合は3ヶ月前に退職の意思を伝えなければなりません。
しかし、すぐに退職したのであれば、下記の方法で可能です。
- 欠勤扱いにしてもらう
- 保育園に了承してもらう
どれも、初日に退職するには、仕事上の過失はない可能性が高いでしょうから、賠償金は発生しない場合がほとんどです。保育園側から一度考え直さないか話したいといわれることも想定されます。このケースでは交渉権のある労働組合か弁護士が運営する退職代行サービスに頼むとよいでしょう。
まとめ
保育士が退職代行を利用する際の是非について検討することは、現職の負担や今後のキャリアを考える上で重要です。以下、この記事のまとめです。
【この記事のまとめ】
- 退職代行サービスは「ありえない」とはいえない
- 退職代行サービスは利用した方が良いケース
- 退職代行サービスを利用する注意点を確認
退職代行サービスのメリットや注意点を理解することで、自分にとって最適な判断をしてください。どうしても退職を言い出せないときや、保育園に行けないときは一度、退職代行サービスに相談してみてください。
自分では踏み出せない未来へ背中を押してくれるでしょう。